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3 調査結果と考察

(1) 部活動への加入について
本県の部活動への参加システムは、希望加入制と全員加入制の2つをとっています。加入の方法は全員加入制をとっている学校が圧倒的に多く、紀要の56頁図1のグラフからも分かるように、昭和60年〜平成7年の計6回の調査から年々全員加入制をとる学校が増えて来ているのが分かります。これは生徒数の減少により部員数の確保が困難で、部活動の存続のために全員加入しなければならないという原因も考えられますが、県内の多くの学校で、新学習指導要領の代替措置の趣旨を取り入れ、部活動の教育的価値が高く評価・理解されているからだと思われます。しかし、学校現場は施設・指導者・生徒数などからくる独自の状況・問題をもっており、その中で生徒は部活動を選択している状態なので、必ずしも全生徒の入部欲求を満たしているとはいえません。そのような現状をふまえた上で、生徒の意識調査による結果を見てみると、図2のグラフにありますが、入部の動機として3割の生徒が「すすめられたから」「希望する部がなかったから」「ただなんとなく」と答えており、スポーツヘの純粋な興味・関心からではなく、消極的な部の選択をしているものも目につきます。また、全員加入制をとっている学校の生徒の中には、図3から分かりますように希望加入制になれば「退部する」「わからない」と答えた生徒が4割近くいます。その理由は図4から分かりますように「自分の希望する部がなかった」「自由に使える時間がほしい」など、部活動以外での活動欲求をあげています。このように、生徒の部活動に対する参加意志が曖昧であれば、活動欲求が乏しくなり、自発的な活動や生徒が魅力を感じる活動が展開しにくくなるのは目に見えています。これらの背景をふまえて今後はさらに希望加入制の研究を進めていく必要があると思われますが、それにも?生徒数の減少、?指導者の不足、?人気スポーツ集中からくる部員の偏り、?部の存続・新設など、様々な問題が派生してきます。また、学校部活動を選択しない生徒も現れてくる可能性もあって、部活動に費やしていた時間を中学生らしく有意義に活用できるかどうかという点についても疑問が残ります。そこで社会教育・家庭教育の充実、家庭・地域社会と学校との連携が一層求められるようになるのではないでしょうか。
このような現状をふまえて、指導者は、生徒の部活動への参加意志を明確にさせながら、生徒は何を望み、何を期待しているのかを把握し指導していく必要があるのではないでしょうか。

 

(2) 部活動に対する生徒・指導者の意識について
学校生活の中であるいは生徒自身の生活の中で、部活動は必要不可欠であり、生活の大部分を占めています。そんな中で「部活動に行くのは楽しいですか」という質問に対して、図7を見てみますと「はい」と答えている生徒が年々増加し、平成6年度は8割近くの生徒が楽しみにしていることが分かります。このことは、学校週5日制により部活動の見直し・指導の改善がなされているものと思われます。ただ、図7・8から分かるように、2割の生徒が「活動が厳しすぎる」とか「人間関係がうまくいっていない」というような理由で「楽しくない」と答えています。このように活動を継続していく中で、生徒自身の身体的や精神的な重圧や仲間作りのうえでの悩みなどが多く生まれますが、反面これらの様々な葛藤を克服させることによって、部活動の意義や他の活動では味わえない良さを体験させながら、生涯体育・スポーツヘとつなげていく方策も考えていくべきではないでしょうか。
また、部活動に対する目標では、図9・10から分かりますように、生徒・指導者とも約4割が「技術・体力の向上」と答えており、この点について両者の思いは一致していると考えられます。ただ、目指すものは同じでも指導者が「精神力の向上」や「生活指導」など人間形成を考えながら過程を重視するのに対して、生徒は「チームが強くなること」「楽しく活動できること」など目先のことに目が向けられているのが分かります。発達段階的には、中学生にとっては「精神力向上」などの指導者の意図はつかみにくいと考えられますが、指導者は生徒の純粋な活動意欲や目的を大切に青みながら、生徒が魅力ややりがい・生きがいを感じて精一杯活動できる場面を創り出していく必要があるのではないでしょうか。

 

 

 

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